「既済(きせい)」とは「すでに成る」という意味です。これを物語でいうと、クライマックスを迎えたところ。旅でいうと、終着点に到達したところ。人で言うと、功なり名を遂げた人のことです。あるべきものがあるべきところに収まった形です。
水火既済(すいかきせい)とは？
既済(きせい)は亨(とお)る。小は貞によろし。初めは吉。終りは乱(みだ)る。
既済(きせい)のとき願いごとは叶う。小さいことを大切にするのがよい。最初は幸運を享受するが最後は乱れる。
「終わりは乱る」というのは、慣れが生じるといい加減になりやすいということ。これは人の持つ特性で、どんなに真面目で几帳面な人でもそのような面はあります。
この卦は易経の中で唯一、陰と陽とのバランスが整っていて、ひとつのものごとが完成したことを暗示しています。
しかし、人は既に完成していてもそこで長く満足することは難しく、ついついさらなる高みを目指してしまう生き物。
そして足を踏み外してしまう。。。
また、完成したと思うとそこに安住したくなります。この安定をずっと維持したい願い、守りに入ります。これも人の持つ特性で、どんなに冒険的で野心的な人でもそのような面はあります。
しかし、完成された状態をキープするのは成し難いことなのでほとんどの場合は失敗に終わります。これも「終には乱る」です。
ものごとは、完成したと思った瞬間からまた崩れていくのが世の常であり、それは人知では覆すことのできない不変の法則である。
そのことを教えてくれるのが水火既済(すいかきせい)の卦です。
水火既済(すいかきせい)の恋愛運と相手の気持ち
既に調う、収まるべきところに収まるという意味がありますから、二人の関係を占ってこの卦が出たら、結婚間近というところかもしれません。すでに願いを自分のものとした今のあなたに必要なのは、そわそわした気持ちを振り払うこと。もっと何かしようと焦って事を起こすと、せっかく上手くいっていることまでダメになってしまう恐れがあります。物事は今あるがままで完璧なのだというのが水火既済(すいかきせい)の考え方。もっとこうしたい、もっとこうであって欲しいと相手に対する願望も高まるかもしれませんが、今ここにある幸せを大切にする。それが長く安定した関係を続ける秘訣です。
水火既済(すいかきせい)初爻の恋愛運
其の輪(りん)を曳(ひ)く。その尾を濡らす。咎なし。
水火既済(すいかきせい)は完成形。初爻は、車輪を引っ張って前に進もうとしたところ、少しばかりの粗相がありました。でも大きなダメージはありませんでした。彼との関係は既に完成しています。ですから、ここから何かを動かしたり働きかけたりする必要はないのですが、何か物足りない気がして余計なことをしてしまうようなとき。あれこれ画策しなくても、物事は通っていく時です。落ち着いてゆっくりしていてください。せっかち禁止。「その尾」というのはキツネの尻尾のこと。
水火既済(すいかきせい)2爻の恋愛運
婦(ふ)、その茀(ふつ)を喪(うしな)ふ。逐(お)ふ勿(なか)れ。七日(なのか)にして得(う)。
水火既済(すいかきせい)は事すでに成れりの時。二爻の、婦(ふ)というのは高貴な身分の女性のこと。茀(ふつ)は身分ある人が顔を隠すために使う覆い。その茀(ふつ)が行方不明になってしまいました。つい、どこへ行ったのかと探し求めたくなりますが、その必要はありません。七日のうちには戻ってくるからです。思うように彼に会えない、何を考えているか分からないということがあるかも。心配しなくてもじきに会えますから落ち着いて待ちましょう。
水火既済(すいかきせい)3爻の恋愛運
高宗(こうそう)、鬼方(きほう)を伐(う)つ。三年にして之(これ)に克(か)つ。小人(しょうじん)は用(もち)ふる勿(なか)れ。
水火既済(すいかきせい)は物事が完成したとき。三爻は功なり名を遂げたところです。大変な苦労をして成し遂げ、ここに来るまでに3年もかかってしまいました。ここからさらに何か事を起こしていくのは得策ではありません。いま手にしている恵みをキープすることに集中した方が、結果として大きな幸を得るでしょう。しかしこれは、器の小さい人には難しいこと。人はつい二匹目のドジョウを狙って足を滑らせて川に転落してしまうのです。苦労して一緒になった二人なら、一緒にいることの幸せを思い出してください。
水火既済(すいかきせい)4爻の恋愛運
繻(ぬ)るるに衣袽(いじょ)有り。終日(しゅうじつ)戒(いまし)む。
水火既済(すいかきせい)は万事ととのっているとき。四爻は、船内が水で濡れているところを発見しては、一つひとつ丁寧に穴を塞いでいきます。どんな小さな水漏れでも放っておくといずれ穴は大きくなり、船が沈んでしまうことを知っているからです。朝から晩まで警戒を怠りません。このような警戒心をもって事にあたる必要のある時です。彼に対しても「このくらいはまあいいや」という横着な態度は改めましょう。どんどん心が曇っていきます。初心忘るべからずです。
水火既済(すいかきせい)5爻の恋愛運
東鄰(とうりん)の牛を殺すは、西鄰(せいりん)の禴祭(やくさい)して実(じつ)に其(そ)の福を受くるに如(し)かず。
水火既済(すいかきせい)は願望成就の後についての話。五爻は事を成し遂げて、祭りを企画するようなとき。たとえ盛大な披露宴を開催したとしても、あなたが実は大して幸せを感じていなかったら、あるいは見栄を張るための行事として開催するのなら、何の意味もありません。逆に、たとえ形式は質素なものだったとしても、その日あなたが深い喜びに満たされていたら、それはどんな豪華な披露宴よりも意味のあるものになるでしょう。
水火既済(すいかきせい)上爻の恋愛運
其(その)首(こうべ)を濡らす。厲(あやう)し。
水火既済(すいかきせい)は、完成して万歳！というときなのですが、五爻はその喜びに溺れてしまっているようです。二人の間に良好な関係を維持するには、不断の努力が必要です。完成した関係であっても、むしろ今ここから新しく関係を作っていくのだという気持ちで、怠ることなく誠実であり続けてください。形さえ整えればなんとかなる、つまり「籍さえ入れればこちらのもの」という考えでは、離婚するために結婚するようなものです。
水火既済(すいかきせい)のまとめ
「完成！」というと、なにやら喜ばしいことのように思われるのですが易経によると、ことはそれほど単純ではありません。
「極まれば変ず」というのが易の考え方。完成したからといってそれで万事OK！ということではないのです。
シンデレラや白雪姫の絵本を読むと、「いつまでもいつまでも幸せに暮らしました」という終わり方をします。
でも実際の人生や恋愛は、クライマックスを迎えてからもさらに続く物語があり、しかもそちらの方が長くて重要だったりします。
一旦完成しても、その美しい状態をキープすることは簡単なことではありません。何かを成し遂げるより難しかったりもします。ダイエットもそうですね。笑
水火既済(すいかきせい)をいただいたときは、完成の喜びにひたりつつも、その喜びを維持する難しさを思い出し、慎重に心くばりをするときなのかもしれません。
無事完成された皆さまが、その美しい状態をいつまでもいつまでも維持できますようにとお祈りしています…。