火水未済(かすいびせい)は水の上に火ですから、これは洋上に朝日が登ったところです。未だならず(未済)というのは、すべてが始まったばかりでまだ何も成せていないということですが、ここから始まることは無限の可能性を秘めています。
火水未済(かすいびせい)とは?
未済(びせい)は亨(とお)る。小狐(しょうこ)、汔(ほとん)ど済(わた)らんとして其(その)尾を濡らせば利(よろ)しき攸(ところ)なし。
未済(びせい)のとき、願いごとは亨(とお)っていく。子ギツネが川をほとんど渡り終えようとして、しっぽを濡らしてしまうようでは良いところがない。
小狐(しょうこ)というのは、まだ小さい狐のことです。人でいうとやっと親元を離れたばかりで、まだ世の中で何も成し遂げていない状態。
ですがこの狐は大きな可能性を秘めています。
今はまだ何になるのかさえはっきりとわかっていませんが、ここからきっと大成していくだろうという希望に満ちています。
「その尾を濡らす」とは油断すること。
大きな可能性を持ちながら、放逸に耽ったり怠けて事をなさないようでは何もいいところはありません。
この卦を得たときは、「今、自分にできることは何だろう?」と足元を振り返り、新たな気持ちで事に取り組むのがいいでしょう。
火水未済(かすいびせい)全体の恋愛運〜~結果より関係性を育てる過程を喜ぶ
恋愛でいうと、まだ始まったばかりで海のものとも山のものともつかない感じ。ここから少しずつ相手の出方を見て、こちらも働きかけてみたり離れてみたりする場面です。
嬉しいことがある反面、ヤキモキすることもあるかも。どんな結末を迎えたいのか、しっかりと理想の未来をイメージをすることが開運の鍵。恋愛で大切なのは結果ではなく過程です。二人で育み育てていく過程が恋愛です。今のあなたはそれを心から楽しんでいるのでしょう。
火水未済(かすいびせい)初爻の恋愛運
其(そ)の尾を濡らす。吝(りん)。
火水未済(かすいびせい)は未完成のとき。初爻は子狐が川を渡ろうとして尻尾を濡らしてしまいました。それは恥ずかしいこととあります。子狐とは、まだ世間知らずで未熟な人物のこと。大人ぶったふりをしても中身はまだまだ幼いのです。冗談も社交辞令も理解できて、相手の弱さも許せるようになって初めて大人の恋ができるようになります。年齢は関係ありません。30歳になっても40歳になっても幼い恋愛をしている人はいます。人間関係から学ぶということが大切です。
火水未済(かすいびせい)2爻の恋愛運
其の輪(りん)を曳(ひ)く。貞にして吉。
火水未済(かすいびせい)は混沌から秩序へ向かうとき。二爻は車の車輪を引っ張って前に進もうとします。つまり二人の距離は近づきつつあるということです。恋が少しずつ動き始めた段階。新しく始まる物語にときめきと喜びを感じ始めたところなのかもしれません。わくわくしますね。未来は明るいので彼を信じて関係を育てていってください。
火水未済(かすいびせい)3爻の恋愛運
未(いま)だ済(な)らず。征(ゆ)けば凶。大川(たいせん)を渉(わた)るに利あり。
火水未済(かすいびせい)は新しい物語の始まり。三爻は、ちょっとしたトラブルに出会ってストレスを感じるようなとき。彼の気持ちがはっきりしなくて骨折り損のくたびれもうけみたいなことがあるかもしれません。なかなか完成しなくて何だか損をさせられているような?でも結果的には雨降って地固まるときです。自分の直感を信じて恐れることなく進みましょう。
火水未済(かすいびせい)4爻の恋愛運
貞にして吉。悔(くい)亡ぶ。震(ふる)いて用(もっ)て鬼方(きほう)を伐(う)つ。三年にして大國(たいこく)の賞(しょう)有り。
火水未済(かすいびせい)は希望の萌芽。三爻はトラブルで凹んでいましたが、四爻はそれを勇敢に乗り越えたところです。がんばりましたね。あなたのがんばりはきっと報われて、大きくて美しい国を褒美としてもらえるような良いことがありそうです。つまり、彼にとってあなたはかけがえのない大切な人になったということ。誤解は解け、後悔は消え失せるでしょう。わからなかったことが分かるようになります。
火水未済(かすいびせい)5爻の恋愛運
貞(てい)にして吉。悔いなし。君子の光。孚(まこと)あり。吉。
火水未済(かすいびせい)は永遠の未完成。五爻は、希望と喜びの道を進んでいます。後悔するようなことはありません。「求めよさらば与えられん」というとき。勝利の光に包まれるでしょう。なぜなら二人の間に信頼と尊敬と真心があるからです。もうなにも心配することはありません。宇宙旅行を楽しんで!
火水未済(かすいびせい)上爻の恋愛運
飲酒に孚(まこと)有り。咎(とが)なし。其(そ)の首(こうべ)を濡らせば、孚(まこと)有れども是(これ)を失う。
火水未済(かすいびせい)は未だ成らず。上爻は未完の中にあって、それでも何かが一旦完成したようです。お祝いをしています。しかし歓楽に耽(ふけ)り酒に溺れてしまうようでは、たとえ天の道にかなっていたとしてもそれを失うだろうとあって、楽しみに耽溺することを戒めています。自分を見失わないでいることはいつでも難しいことですが、目先の楽しみだけを追い求めるのではなく、ときどきは「自分が人生でどうしても叶えたかった大きな願いはなんだったかな?」と振り返ることで、本当に願っていた人生を実現できるでしょう。
火水未済(かすいびせい)のまとめ
易経という書物のいちばん最後に置かれているのが、この火水未済(かすいびせい)です。
「完」といったところでしょうか?
ですが、この卦があらわすのは「永遠の未完成」なのです。
宇宙にスタート地点や終着駅がないように、易にもはじまりもなければ終わりもありません。
極まれば変化するのが易です。
便宜的に順序よく並べられ、火水未済(かすいびせい)が最後に置かれていますが、ここで終わりかと思いきや、この卦はスタートをあらわす卦でもあります。
またここからすべてが始まります。
希望と喜びに満ちた循環を繰り返すのです。
永遠の未完成に向かって。