山沢損(さんたくそん)とは?
山沢損(さんたくそん)というと、「損をするのかな?」と思われがちですが、易経で言うところの「損」は「損害」「損失」といったマイナスのイメージはありません。単純に何かを「減らす」という意味です。そして減らすことが幸運につながるときです。
損は孚あれば元吉にして咎なし。貞にすべし 往くところあるに利あり。
曷(なに)をか之を用いん。二簋(き)用いて享すべし
真心があればすばらしい幸運がもたらされる。 咎はない。忍耐強くあれ。なにかするのによい。 神様にお供えをするときは2つの小さい皿で十分である。
「損して得とれ」という言葉がありますが、山沢損(さんたくそん)の「損」は見返りを期待して何かを与えることではありません。ここでの「損」は見返りを気にせず、自分の持っているものを減らすこと。
例えば、大切な人にプレゼントをするときは普通見返りを気にせず贈りますよね?
「このプレゼント3,000円だったから、お返しは◯円は欲しいなぁ」と思いながら贈ることはあまりないと思います。むしろプレゼントすることが「喜び」ということがほとんどではないでしょうか。
男性であれば、自分の時間やお金を費やして女性にプレゼントをすることで、男としての自信を深めたり、喜びを得たりします。それはおそらくお返しの品を期待してのことではなく、彼女の笑顔が見たいから。
そのような気持ちで、自分を減らして相手に与えることですばらしい幸運が訪れると易は告げています。
与えるものは「二簋(にき)」、つまり質素なもので十分です。無理して大盤振る舞いする必要はありません。
山沢損(さんたくそん)全体の恋愛運
自分を減らして与えることで喜びが増すという卦です。恋愛運は大吉。彼からの特別なプレゼントが届くかも。笑顔で受け取ってください。
また、夫婦和合の卦とも言われていて、結婚にはこれほどいい卦はありません。もうじき最大のプレゼントがもたらされるかもしれませんよ。
山沢損(さんたくそん)初爻の恋愛運
事を已(や)めて遄(すみや)かに往く。咎なし。酌(く)みて之を損す。
山沢損(さんたくそん)は減らして吉のとき。初爻は自分の仕事を辞めて速やかに行くとあります。自分の仕事を犠牲にしてでも(減らしてでも)、相手を助けに行くのが吉。それが咎なしとなります。例えて言うなら、単身赴任などさせず急いで彼を助けに行くべきときです。それが2人を益することになります。お互いに斟酌できたらいいですね。
山沢損(さんたくそん)2爻の恋愛運
貞に利あり。征(ゆ)けば凶。損せずして之を益す。
山沢損は、自分の身を減らすことで大きなものを受け取る。困っている人を見るとつい、「あれをしてあげよう、これをしてあげよう」と手を出してしまいたくなりますね。でも今はじっと見守ることで、後に大きなものを受け取ります。2人の未来を信じて、ただ黙って信頼を寄せることも「損せずしてこれを益す」ことになります。
山沢損(さんたくそん)3爻の恋愛運
三人行けば則ち一人(いちにん)を損す。一人行けば則ち其の友を得(う)。
山沢損(さんたくそん)は、減らして吉のとき。天下の物はすべて一陰と一陽が組み合わさることで成立しています。ですから1人で行けば必ず気の合うパートナーが得られますが、3人で連れ立って行けばその各々が最適なパートナーについて迷うことになります。女性が3人いると姦(かしま)しいとして男性からは煙たがられます。男の人が憧れるのは、1人で凛と立つ女性であって、女子会などして群れている女性ではありません。SNSも同じです。
山沢損(さんたくそん)4爻の恋愛運
其(そ)の疾(やま)いを損する。もしすみやかなれば喜び有り。咎(とが)なし。
山沢損(さんたくそん)は損して得取れ。四爻は「疾(やま)い」ですから、小人で道徳的に病気であるか、欠点があります。その欠陥を速やかに減らすことができれば喜びがあるときです。もしあなたが2人の関係のことでくよくよと悩んでいるのならそれが疾(やま)いです。速やかに心を改めて素直に彼に謝ることができたら、喜ばしいことで咎(とが)なしとなります。
山沢損(さんたくそん)5爻の恋愛運
或(ある)いは之を益す。十朋(じっぽう)の亀(き)も違(たが)う克(あた)わず。元(おお)いに吉なり。
山沢損(さんたくそん)は、下を減らして上を益す。この五爻は柔順で私心のない人物なので、どこにいても愛されます。もちろんパートナーからもかけがえのない人として大切にされ守られているでしょう。これは千両もするほどの高価な亀の甲羅で占っても間違いのないこと。何事も上手く行き、思ってもみなかったほどの幸運に恵まれるときです。
山沢損(さんたくそん)上爻の恋愛運
損せずして之(これ)を益す。咎(とが)なし。貞(てい)にして吉。往く攸(ところ)あるに利あり。臣を得て家なし。
山沢損(さんたくそん)は、減らすことで利がある時。上爻はその極まるところですから、もう減らすものがないというところまできました。安心してください。ここから先は受け取るのみです。あなたがこれまで自分を減らしてでも与えてきたものが、何倍にもなって返ってくるでしょう。よくがんばりましたね。溢れる愛を受け取ってください。
山沢損(さんたくそん)まとめ
O・ヘンリーの短編で「賢者の贈り物」という話があります。
男性は大事にしている懐中時計を質に入れて、べっ甲の櫛を買い、その妻は美しい長い髪を売って、懐中時計につけるプラチナの鎖を買ってお互いにプレゼントしたというお話です。
このお話、昔は嫌いだったんですよね。でもなぜか今は好きです。
愛は与えるほどに増えて、減ることはありません。
素直な気持ちで与え、受け取ることができたらいいですね。