蹇(けん)は跛(びっこ、あしなえ)が元の意味。そこから大きな困難に足止めされている状態を表します。目の前には黒く冷たい川が流れ、背後は断崖絶壁という状態に足が縮こまってしまい一歩も進めなくなっているのです。そのような困難な状況にどのように対処したらいいのでしょうか。
蹇(けん)は、西南に利あり、東北に利あらず。大人(たいじん)を見るに利あり。貞(てい)にして吉。
南西というのは、実際の方角も意味しますが、暖かくて親切な友人のいるところ。東北はその逆で、寒くて敵の多いところです。だから西南に進むのが良い。
「大人」は、物事を良くわかっている人生の先輩、頼りになる人ですね。必ずしも年長者とは限りません。そういう人に会ってアドバイスをもらうのが良い。
そして、困難にあっても道を守ることで運気が開けてくるとあります。
正しい道を守っていても困難に遭遇することはあります。人には親切にして、若い人の育成に励み、いつも機嫌よく、怠ることなく日々仕事をする。困っている人がいたら助け、暴飲暴食を慎み、早寝早起き、質実剛健、清廉潔白…いわゆる正義の人。
なのに出世しない。給料が上がらない。それだけならまだしも人に小バカにされる。恋人に逃げられる。奥さんに逃げられる。子供に逃げられる。会社は倒産する。
「なんで?!」と問う方がたまにいらっしゃるのですが、答えは簡単です。
普通の人は、そういう人を見て「すごいな」と思うと同時に、窮屈さを感じるからです。
自分はグータラでだらしないしお金もないから、あの天才みたいな人といると疲れちゃって、一緒にいても少しもくつろげない。だからなんとなく遠ざけてしまう…。
というのが普通の人の感覚です。
そのため、正義の人は周囲から必要な助けを得られず、友達もできにくくなります。つまりこういう人は、無意識のうちに周りの人を遠ざけているのです。
ですから、この「自分はこれほど頑張ってるのに、どうも上手くいかない」という人に必要なのは、リラックス。それが「西南に利あり」です。
頑張ってるのに上手くいかないのではなく、頑張りすぎて上手くいかなくなっているのです。決して能力が低いわけではありません。
要するに、この卦が言っているのは「自分に優しく」ということです。
無茶をして冷たい河に飛び込むのではなく、暖かい場所を探しなさい。親切な人、頼りになる人に会って、アドバイスをもらいなさい。一人で抱え込まないように。そんなことを伝えている気がします。
北風と太陽の例えもあります。肩の荷を降ろして、リラックスしてください。
水山蹇(すいざんけん)全体の恋愛運
どうも上手く進めない。相手が何を考えているのか分からない。気のある素振りは見せるくせに、一向に行動してこないし連絡すらよこさない。LINEも手紙も既読無視。何なのあの人?という状況かもしれません。彼のことを気にしすぎです。人生は恋愛だけではありません。美味しいものを食べに行くとか、旅行するとか、ショッピングや読書もいいですね。自分が心から楽しいと感じることを見つけてそれを楽しみましょう。人生を大いに楽しむあなたの姿を見たら、彼の気持ちも変わるかも?
水山蹇(すいざんけん)初爻の恋愛運
往けば蹇(なや)み、来(きた)れば誉(ほまれ)あり。
水山蹇は進むも困難、退くも困難なとき。初爻は、進んでいくと大いに悩むことになる。引き返してじっとしていれば名誉なことになると言っています。リラックスして状況が好転するのを待ちましょう。困難に遭って、じっと待つというのは、恋愛中の人には難しいものです。ですが、窮地にあっても慌てず騒がず、ドンと構えていられる人こそ、最後には平穏を手にすることができるのです。時を待つことで嬉しいことがやってきます。
水山蹇(すいざんけん)2爻の恋愛運
王臣(おうしん)蹇蹇(けんけん)。躬(み)の故(ゆえ)にあらず。
水山蹇は思うように進めなくて困窮するとき。二爻は、王様と臣下がともにその難局に立ち向かいます。今ある困難は、彼と共に知恵と力で乗り越えましょう。そのことが自分一人ではなく、多くの人の喜びにつながりそうです。自分の身をかえりみない献身的な努力が吉。彼の支えになれるのはあなたです。
水山蹇(すいざんけん)3爻の恋愛運
往(ゆ)けば蹇(なや)み、来(きた)れば反(かえ)る。
水山蹇(すいざんけん)は、行き蹇(なや)むとき。三爻は、相手から頼られ寄りかかられて悩む時。自分も相手に頼りたいところですが、それができずに困っているようです。また、あなたの中には頼られてまんざらでもないという気持ちと、自分が彼に頼るなんてとんでもない!という気持ちがありそうです。彼があなたに頼るのなら、あなたも彼に頼っていいのですよ。一方的に頼られるばかりでは疲れてしまいます。
水山蹇(すいざんけん)4爻の恋愛運
往けば蹇(なや)み、来(きた)れば連なる。
水山蹇(すいざんけん)は、行くと蹇(なや)むとき。四爻は蹇(なや)みの中に入り込んでしまっています。これ以上進んでも出会うのは困難ばかりです。どうにも真面目すぎるようです。「彼の間違いが許せない!」と正義感に燃えているのかもしれませんし、功を焦っているのかもしれません。少し気持ちを緩めてはいかがでしょうか?蹇(なや)みのほとんどは自分が作り出すものです。思い悩むのをやめたとき、思いがけない出会いや和解があったりするものです。
水山蹇(すいざんけん)5爻の恋愛運
大いに蹇(なや)み、朋来(ともきた)る。
水山蹇(すいざんけん)は、蹇(なや)みの中にあるとき。五爻は大蹇(たいけん)ですから、ずいぶん深い蹇(なや)みの中にあるのでしょう。人生の大半を蹇(なや)みの中で過ごしてきたのかもしれません。悩みの国の女王ですね。あなたがその蹇(なや)みをいつまでも持ち続けることをあきらめたとき、柔和で穏やかな人が助けに来てくれます。素直にその人にしたがいましょう。
水山蹇(すいざんけん)上爻の恋愛運
往(ゆ)けば蹇(なや)み、来(きた)れば碩(おおい)なり。吉。大人(たいじん)を見るに利(り)あり。
水山蹇(すいざんけん)は、蹇(なや)んでいて進めない。上爻は蹇(なや)みの極まるところ。進むことばかり考えて、退くことを知らないと人は深い悩みに落ち込みます。大切な人を失って初めて気がつくこともあるでしょう。我を張るのをやめて天の声にしたがえば大きな幸せを受け取れて吉。豊かな人間関係を築いている人、幸せな人生を歩んでいる人に直接会ってアドバイスをもらうことも大切です。
水山蹇(すいざんけん)のまとめ
K2という山があります。標高8,611m。エベレストに次ぐ世界第2の高峰で、世界一登るのが難しい山とも言われています。実際にエベレストより登頂成功率は低いそうです。
水山蹇(すいざんけん)のときは、そんな山を目の前にしているようなときです。
自分なら行ける!チャレンジしたい!という思いかもしれませんが、無理に進んでも得るものは少ないとき。命を落とすほどの危険もあるときです。
そんな氷の山に登るより、コタツに入ってぬくぬくしたら?というのが水山蹇(すいざんけん)にあたっての易の提案です。
コタツでくつろいでゆっくりしたからと言って、あなたの価値が下がることはありません。
簡単なこと、易しいことは価値が低いと見なされがちですが、そんなこともありません。
困難に打ち勝って達成したことが素晴らしい。そうでしょうか?
コタツでぬくぬくしていることはくだらない。そうでしょうか?
もしコタツでぬくぬくしている人を馬鹿にする気持ちがあるのなら、その考え方こそがあなたを苦しめているのです。
気を楽にして、暖かく歩きやすい道を進んでください。